3 ロゴの選定・候補の絞込み
1 募集設定・コンペ開始
・ロゴをコンペ形式で決めた理由
・イメージカラーやタイプを指定するか否か
2 各デザイナーさんから提案が集まる
・ロゴの提案は多ければ多いほどいいのか
3 選定・候補を絞込み
・それぞれの社員がロゴに求めたこと
・高級感VS親しみやすさ
・スタンダードVS奇抜なもの
4 採用・ロゴの色など修正
・採用の決め手になったのは
・全種類!あらゆるパターンで修正を試せ
・名刺、看板、プレゼン資料……ロゴを使うシーンを想定する
会社の企画した住まいのシリーズ「リンクハウス」のロゴを制作することになりましたが( >>前回までの流れはこちら)、 続々と集まりつつあるロゴを前に、私たちは初めて「ロゴに求める優先順位」を話し合いました。しかしそこでも、各意見はバラバラでした。
それぞれのメンバーがロゴに求めたこと
【社長】
・リンクハウスというコンセプトをあますところなく表現していること。言い換えれば、この線を少しでもずらしたら意味は成り立たないという、デザインにも必然性があること・高級感があること
・誰にでも描けるようなシンプルなものであること
・既視感がないこと。人の記憶に残ること。忘れないこと。他のロゴに埋もれないことが最も重要
・ぱっと見て家だと分かること
・おしゃれさと親しみやすさが混在していること
・ぱっと見た第一印象、視覚に訴えるもの、センスが大事。コンセプトは最悪、後付けでもよい
・リンクハウスは「つながる」がコンセプトで、そのリンク・輪をきちんと表現できていること。また、閉じた輪ではなく外に、街に広がった輪であること。
・つながる、だけではなく、つながったことによって得た「結果」が、デザインにあらわれていること(例えばハートだとかあたたかさ、絆など)
・リンクハウスの形態をもっともあらわしているもの。大事なのは、家と家がつながる部分よりも、その間の「共有スペース」だと考える。家がダイレクトにつながるのではなく、人間関係を潤滑にするその「余白」部分がきちんとデザインにあらわれているか。
各社員が「ロゴに求めるもの」はまったく異なり、そして同じ人間でも次の日には意見を変えたり。と当たり前ですが、大勢で決めようとすればするほど、ロゴ選定は難航します。
問題は、ロゴを決めるときの指標が多すぎること。ですので、社内で意見が分かれやすい大きな軸に的を絞って考えることにしました。
高級感 VS 親しみやすさ
これは最後の最後まで悩みどころでした。窮地を脱する大きなきっかけになったのは、社内の人の一言です。
「どんなデザインのロゴであっても、色やトーンを変えることで高級感・重厚感は出せる」
この一言は非常に効きました。
当初、リンクハウスのオリジナルのロゴは左のような色使いでした。ポップで明るい楽しそうなイメージが私は気に入っていたのですが、社長が求める「高級感」の要素はどこを探しても見つけられません。
ですが、黒やゴールドなどを使うことで、結果的には社長も満足するようなパターンも作ることができました。それが右のロゴです。
デザイン上は明るくのびやかな感じを残しつつ、色合いで落ち着きを与える。
どんなロゴでも、ある程度の高級感は後付けできる。ということは、最初で最も重視すべきなのはデザイン・形そのものだということです。
シンプルでスタンダード VS 多少奇抜でも目をひくもの
これは最初に考えるべきものですね。ロゴはシンプルなものにするか、それともぱっと目を引く印象的なものか――。という二択。結果的には「目を引くもの」を選びました。私が考慮したのは以下の点です。
・会社のロゴではなく、提案企画したいわば「商品のロゴ」であること
・「リンクハウス」は新しく生まれたばかりで、知名度がまだないこと
・「家」がコンセプトのロゴは世の中に数多くあること
ロゴ選びにどれが正解とかはありません。ただ、私はとにかく
「どこにでもありそうなロゴだけはダメ」
基準はほぼそれ一点のみ。
あくまで個人の感想ですが、一貫して「一目見て強い印象を与えるもの」がロゴの必要最低限の要素だと考えています。知名度のある大企業ならシンプルなロゴで洗練されたかっこいいイメージを与えることもできますが、中小企業はテレビCMを流せるわけでもなく、人の目に触れる数少ない機会で、いかに記憶に残せるかが勝負だからです。
ただ社内では「ロゴに既視感はあってもいい。『どこかで見たことがある』『あの企業のロゴに似ている』と引っかかりを残せれば、逆の意味で記憶には残る」という目からうろこの意見もありました。なるほど。。。
ぱっと見て何の商品か分かるか否か
これは、私も日によって考えがぶれてしまう難しい問題でした。リンクハウスの場合、「ぱっと見てすぐに家だと分かる」。これはどれだけ重要なのでしょうか。
人によって意見はさまざまで、
「家の情報を求めている人にとってすぐ分かるように、とにかく『家を売っている』ことが一目で分からないとダメ」
「家を売っている会社なんていくらでもある。だから他の家とは違う部分、ハウスではなく『リンク』を全面に出さないとダメ」
「リンクもハウスもそこまで強調しなくてもいい。人はロゴを見るだけで、そこまで深く考えていない。よくよくじっくり見れば『こういうコンセプトも表されているのか』程度でいい」
私も最初は「家だとすぐに分かるロゴを!」と思っていましたが、そうすると必ずどこかの不動産会社や建設会社と印象が似てしまうんですよね…。
”家”だとさりげなく分かるロゴ。そういうあいまいなラインに、最終的には落ち着きました。
それ以外にも、ここに書ききれないほどのたくさんのことで、本当に悩みぬきました。時間ができたときに随時追記していこうと思います。
とにかく街中の看板やロゴが気になって仕方なくなった2週間でした。
そして、いよいよ採用の段階へ【STEP4 採用&修正依頼】⇒
執筆者 手嶋 照沙(てしま・てれさ)
インターステーション 一級建築士事務所。インテリアコーディネーター。
独身女性専用の一戸建て「Figona(フィゴーナ)」を企画。